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2016年10月28日 (金)

パーキンソン病の原因

パーキンソン病の患者数は10万人に100人~150人くらい(1000人に1人~1.5人)。60歳以上では100人に約1人(10万人に1000人)という割合で推移し、今も原因不明で難病に指定されている。

線条体のDA含量が成人レベ ルの20%以下に減少するとパーキンソン病症状が発症する。正常人でも線条体のDA含量は加齢とともに減少し、理論的には120歳で全てのヒトはパーキンソン病になるとさえ言われる。パーキンソン病は遺伝的素因に環境因子が様々な程度に加わって生じる多因子疾患だと考えられる。
参照論文→ https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/92/8/92_8_1394/_pdf

大脳の下にある中脳の黒質ドパミン神経細胞が減少してドパミン神経が減ると体が動きにくくなり、ふるえも起こりやすくなる。ドパミン神経細胞が減少する理由はわかっていないが、ドパミン神経細胞の中にαシヌクレインというタンパク質が凝集して蓄積し、ドパミン神経細胞が減少すると考えられていて、このαシヌクレインが増えないようにすることが、治療薬開発の大きな目標となっている。

30年程前の研究報告からあまり原因究明の進歩はなさそうだが、このページにはパーキンソン病の原因物質についての事例を記載。・・ボケの原因を探る(岩波新書)から抜粋

正常な脳の生理的老化やアルツハイマー型老人性痴呆の真の原因を探るための物質的な手がかりのうち、因果関係がはっきりしたものはほとんどない。ところが、老化に関係した病気のうち、もう一つの重要な病気であるパーキンソン病では、最近、ミステリー小説もどきの事件を発端として、真の原因を探る手がかりになる化学物質が判明した。

パ-キンソン病も老人に多く見られる病気で、五十歳ごろから発病し、七十歳以上では人口の約一%が患者といわれるほど多い。この病気の特徴は運動障害で、日常の動作が緩慢になり、手や指がふるえたり、筋肉が固くなって、字が書きにくくなることなどから気付かれる。このような症状は多かれ少なかれ他の正常の老人にもよく見られるので、アルツハイマー病と同じく、脳の老化の一つのパターンが顕著に進行した病気とも考えられている。

パーキンソン病患者の脳を調べてみると、黒質といわれる部分にある黒いメラニン色素をもったニユーロンがおかしくなり、死んでなくなっていることが主な病変であることは古くからわかっていた。この死んでしまうニユーロンはその神経繊維の先端が線条体という場所に連絡しているので、黒質-線条体系ニューロンともよばれ、手や足などの運動の調節を行っている。

そのため、この病気になると手や足の運動がうまくいかなくなるのである。のちに、この神経繊維の先端から放出され信号を伝える神経伝達物質がドーパミンであることがわかり、パーキンソン病患者の脳の黒質‐線条体ではドーパミンが著しく減少していることがわかった。また最近の研究により、黒質ニューロンの死によりドーパミンをつくるチロシン水酸化酵素という酵素や、その酵素を助けるテトラヒドロビオブテリンとよばれる物質の減少も起こっていることがわかった。そこで減ったドーパミンを増やすためにL‐ドーパとよばれる物質を投与するL―ドーパ療法が行われ、症状はよくなるようになった。

密造麻薬事件

しかしながら、〃黒質一一ユーロンがなぜ死ぬのか〃というこの病気の本当の原因については長い間、手がかりがなかった。ところが、米国で起こった思いもかけない〃事件″を発端に、この黒質ニューロンだけを殺してしまい、パーキンソン症状を引き起こす化学物質MPTPが発見されたのである。

1982年、カリフォルニア州で2642歳という若い年齢にもかかわらずパーキンソン病に似た著しい運動障害を起こす患者が4人も現れた。彼らは町で密売された新しい〃合成ヘロイン〃を使用していた。最初の患者の担当医は、この〃合成ヘロイン〃に何か毒物が含まれているのではないかと推理し、友人の女性毒性学者に相談した。たまたま彼女は数年前、雑誌に発表されていた論文を読んでいた。それは、次のような患者の例であった。

ワシントンに住むある大学院生が自宅で〃合成ヘロイン〃である1メチル‐4フェニル‐4プロピオノキシ‐ピペリジン(MPPP)を密造した。しかし彼は技術のまずさから不純物として1―メチル-4‐フェニルー1,2,3,6テトラヒドロピリジン(MPTP)が混入したものをつくってしまった。そして彼はそれに気がつかず、その〃不純ヘロイン〃を自分に注射してしまった。彼は急にパーキンソン症状を起こして、二年後に死亡してしまったという。

この大学院学生の脳を死後解剖したところ、黒質ニューロンは大きく破壊されていた。この物質が原因であることを証明しようとしてこの不純ヘロインをモルモットなどに注射してみたが、残念なからパーキンソン症状をつくり出すことはできなかった。

この重要な示唆を含む論文は、初めアメリカの主要な医学雑誌に投稿されたが、いずれも内容が不完全などの理由で掲載を断られてしまい、創刊されたばかりの新しい雑誌にようやく発表されたのである。

この論文を知って大きな手がかりを得たカリフォルニアの担当医らは、カリフォルニアの〃合成ヘロイン〃にもMPTPが混入していることを、感度のよい分析法で確かめた。彼らの論文はアメリカで最もよく読まれている科学雑誌である「サイエンス」に発表された。これによって多くの人が、にわかにMPTPと。パーキンソン病の関係に注目することとなった。

最終的には、米国国立衛生研究所の研究者が、MPTPを静脈注射したアカゲザルがパーキンソン症状を起こすことを証明し、カリフォルニアの事件の原因は究明された。しかも初めてパーキンソン病と同じような症状を実験動物にも起こすことができるようになった。

こうして大きな物質的手がかりが得られ、突破口が開かれたので、現在までにおびただしい数の研究が発表され、マウスなどでもMPTPが黒質ニューロンを死なせること、MPTPは体内のモノアミン酸化酵素などによって1メチル‐4フェニル‐ピリジニウムイオン(MPPイオン)に代謝され、本当の毒性をもつものは、このMPPイオンであることなどがわかった。

MPTPの発見は、実験動物モデルの作製ばかりでなく、パーキンソン病の研究、さらに脳の老化研究にとって、もう一つの重要な意義をもっている。それは自然に起こるパーキンソン病ではMPTPに似た、あるいは似た作用をもつ化学物質が体内に蓄積して、黒質ニューロンのみを殺すようにはたらいている可能性を示していることである。

確かに。パーキンソン病では、遺伝的要因はほとんど関係していないことが疫学的調査でわかっており、体外からとりこまれたり、または体内に何らかの理由によって生じたMPTP様物質がパーキンソン病を引き起こすらしい。

真の原因物質は?

したがって、MPTPを手がかりにパーキンソン病の真の原因物質を探究する研究が、次の大きな目標となってきた。19856月にニューヨークで開かれた第8回パーキンソン病国際シンポジウムで、カナダの神経学者,ハル-ボーらは、モントリオール市周辺での疫学調査にもとづき、農薬の使用量とパーキンソン病の発症率に相関があると発表し、注目された。従来の疫学者は、国単位で比較し、工業化の程度の異なる国の間でも発症率には差がないとして合成化学物質の関与を疑問視していたからである。

バルボーらは、モントリオール市の周辺では、人種構成や医療施設の利用度などに偏りが少なく原因調査がやりやすいことを利用し、5270例のパーキンソン病患者の分布を詳しく調べた。水系により九区に分け、居住地ごとの発症率を計算したところ、野菜・果樹栽培を中心とする近郊農業地帯で。パーキンソン病が多く見られ、さらに、木材・パルプエ場の周辺で、異常に率の高い〃ホットスポット〃が発見された。この農業地帯での多発については、もちろんさまざまな原因が考えられるが、彼らは同地帯でことに大量に使われている合成化学物質である農薬に注目した。農薬の使用量と発症率を九区すべてで比較すると、0.967という高い相関係数が得られた。

バルボーらの目か農薬に向けられたのは、パーキンソン病が産業革命後にでてきた新しい病気であることのほかに、MPTP、MPPイオンと非常によく似た化学構造をもつ除草剤.ハラコートの存在に気がついていたためだろう。パラコートは強い急性毒性をもっており、日本では自殺や自動販売機飲料への混入犯罪などで多くの人命を奪っていて、最近ついに使用が表面上自粛された、いわくつきの物質である。彼らは、カエルの。パーキンソン病モデルを使って、パラコートの慢性投与でカエル脳のドーパミン含量が低下し運動障害が起こることを報告し、パラコートなどの農薬類が原因物質の一つではないかと提唱している。

一方、永津俊治(藤田学園保健衛生大学)、吉田充男(自治医科大学)らは、MPTPやMPPイオンに似た物質のうち、1,2,3,4テトラヒドロイソキノリンをマウスやサルに連続投与し、ドーパミンをつくるチロシン水酸化酵素活性が線条体で減少していることを示し、イソキノリンと似ている化合物が生体内に蓄積して。パーキンソン病を起こす可能性と、イソキノリン類似化合物がドーパミンニューロン内で生合成される可能性を示唆している。

<ニューロン死をもたらす毒物>
いずれにしろ、パーキンソン病の特徴である黒質にあるドーパミンニューロンの変性には、さまざまな過程が考えられ、原因物質は一つとは限らない。一般にニューロンが長期に生存するためには、多数の物質代謝系と、その調節機能がすべて正常にはたらいていなければならないので、毒物の作用点も多くなる。

しかし、パーキンソン病の場合、なぜドーパミンニューロン、ことに黒質にあるものだけが死んでしまうのかを解明しなければならない。

また数日で症状がでてくるMPTPに比べ、自然のパーキンソン病は非常にゆっくりと症状が出てくる点も、毒物の生体内での代謝蓄積を考えねばならず問題となる。今後は、より直接的な疫学的調査のほかにMPTP類似物質を手がかりに、黒質のドーパミンニューロンヘの選択的毒性を指標にした毒性実験、細胞生物学実験がますます重要になってくるであろう。

MPTPがドパミンニューロンを変性脱落させるという因果関係ははっきりしている。MPTPは細胞内で代謝されたりしながら、さまざまな毒作用を細胞のあちこちで起こし、結果的にニューロンが変性するのであろう。これらの過程を明らかにするには、綿密な生化学的、毒性学的追跡が必要である。

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